アンバランスのすすめ
証明写真を撮ってきてくださいと言われる。
果たして、証明写真は、なにを証明するのか。
証明写真が証明できるものなど無い。
普段は着ない詰襟のシャツを身につけて、しっかりと髪を固めた姿が自身の証明だと言える者がいるのか。
女性に至ってはもっと酷い。
いつも以上に厚化粧を重ね、鏡を何度も見ながら自身の造形と体裁を整える。
これ以上に恐ろしいことはそうはあるまいと思う。
自身の証明とは、なかなか難儀だ。
自分が自分だと証明するためには、一筋縄の「自分」では難しい。
例えば、証明写真に
「銀杏BOYZが大好きです!」
「休みの日は一人旅に出ます!」
「電車の一番端の席に座ることに命をかけています!」
などと書いたところで、それは自己の証明にはならない。
であるならば、飛びっきりのお洒落をして、証明写真に写るというのはどうなんだろう。
一等地のレストランで夕食を摂るときの服装で、
一張羅の服を引っ張り出して、ここぞとばかりの厚化粧を顔に塗りたくって撮影に臨みたい。
採用官はそれを見て、
「あぁ、こいつはなんだかスカしていて気に入らない」とか、「ヤッパリ美人は、自分の映える格好を心得ている」などと話し合う。どう?
お洒落をするときには、出来るだけアンバランスさを残すと尚良い。